公衆電話

ロンドンのどこでも見られる公衆電話。
公衆電話を見るたびにGatwic空港に降り立った時のことを思い出す。

あの日は雨が降っていた。
到着時刻12:00am過ぎ。
やはり、ロンドンは雨の国だった。
通路に沿って入国審査窓口に進む。
行列に次ぐ行列。
イギリス国民、ユーロ圏内、それ以外の第三国みたいに分かれているが、半端じゃなく第三国のスタッフが少ないし、時間がかかる。
一時間位並ばせられる。
そして、自分の番。

入国審査員(N)「何の目的でこの国に来たの?」
僕(B)「観光です。」
N「それなのに三ヶ月?居すぎじゃない?」
B「いえ。そうとは思わないんですが。。。」
N「ちょっと、そこに座って待ってて。」
B「えっ?わかりました。」

しぶしぶ座る僕。
まさかの入国保留。
今は1時過ぎ。
今日中に辿り着くのだろうか不安になる。
その後また30分くらい審査員は電話したり、他の人に相談したりしてる模様。
しばらくして呼ばれる。
「残高はどのくらいあるの?日本で車は持ってる?」
などなど、プライベートに入りまくりの質問攻め。
そして、最後に
「絶対この国で働かないでね。」
の一押し。
この国で働けないことを悟る。
そして、無事入国2:00AM。
外に出るとあまりの寒さに凍える。
この時間に両替所があいてるか、どうやって行ったらいいのか。
しかもケイタイの充電はすでに切れていて電話番号がわからない(次回があるのなら手書きのメモも忘れずに)。
OMG!!
絶望感に襲われる。
とにかく、タバコを吸って落ち着こうと喫煙所へ。
そして、タバコを吸ってるとさっきの入国審査員の女性を見つける。
恐る恐る話しかけると。
あら、さっきの日本人!みたいな感じで表情が緩む。
「さっきはごめんね、仕事だから。」
なんやらかんやら話しているが半分以上は理解できない。
そして、両替所とインターネットができないと困ってることを伝えると場所に案内してくれるとのこと。
そして、付いていく。
両替所は閉まっている。
「でも、ATMがあいているから大丈夫よ。そして、ネットはそこでできるから。」
と審査員は去る。
「ありがとう。助かりました。」
と僕。
しかし、ATM使えず。
絶望感again。。。
頭もフラフラ。
それでも動かなければ誰も助けてくれない。
まずはカフェの店員さん。
次は航空会社のデスクの掃除をする人。
一度出て交通誘導員と両替所を聞く。
雨、風、寒さがより不安を煽る。そして、疲れさせる。
その交通誘導員が
「こっちは南のターミナルだから、北のターミナルならなんとか開いてるだろうとのこと。そして、この電車はフリーで動いてるものだから、向こうまで乗れるよ。」
とのこと。
「ありがとう。」
と僕。
とにかく、行ってみるしかない。
そして、不安に思いながら行ってみると、両替所があいている。
そして、両替完了。
第一段階クリア。
次はネットにつなげてGmailを呼び覚まし、電話番号をゲットしなければ。
いそいそとネットにつなぐ。
10分で1ポンド。
そして、接続。
んっ、日本語表示に変換できない。。。
また、試練。
そして、すぐ上を見るとUSB接続ができることに気づく。
すぐに日本から持ってきたスマホを差し込み起動。
なんとか充電してる模様。
そして、Gmail起動。
電話番号をゲット。
第二段階クリア。
いそいそと疲れた体に重い荷物を抱え公衆電話に向かう2:15am。
そして電話をかけてみると向こうから友達の声が。
もう泣きそう。
「電車があるなら電車でVictoria駅まで来て、地下鉄はこの時間は通ってないだろうから駅に着いたらタクシーで来て。まだ起きてるから。インターフォンは4を押して。」
すぐに電車に飛び乗りVictoria駅に向かう。
不安と疲れでボロボロで。
なんとかVictoria駅に着くと人はまばら。
駅を出ると若者が酒を飲んで楽しそう。
タイトなカジュアルスーツを着ていてかっこよく見える。
そして、ロンドン独特のタクシー。
雨。
そこでロンドンに着いたことを実感する。
そして、とりあえず一服。
タバコをねだられる。「サー、タバコを1本もらえないかな。」
やはり、ここはタバコが高いのか。
何はともあれ、またロンドンを感じる。
タクシーの列に並び乗車。
1シートで足場が広く、スーツケースなんて余裕で置ける。
運転手に家までの地図を渡す。
そして、発車。
雨のロンドンを走る。
テムズ川沿いにはロンドンアイ(観覧車)を見る。
ここはロンドン。
タクシーの運転手は迷いながらも家に届ける。
50ポンド(約7000円)。
今考えると高い。
昼間ならバスや電車で2ポンドで来れる場所。
そして、Kとの再会。
何年ぶりだろう。
少しの話をしてKも明日が仕事と言うこともあり、就寝。
一人で寝せてくれた。

この日のことを一生忘れないだろう。
少しの情報で一人で来た初めての海外。
仕事をするわけでも学校に行くわけでもなく、ただ生活をするために来た国、イギリス、ロンドン。

あの日から今日でちょうど一ヶ月。

何か特別なことをしているわけでもないのだけれど、多くのことを今この国で学んでいる気がする。